駿台ADVANCE

DATA FILE

データでひもとく大学入試

共通テスト3年目!
どうなる?23年度入試

 21年度入試で大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)が導入された以降の2年間は新型コロナウイルス感染症に翻弄された入試が続いています。21年の年末には落ち着きを見せたかに思えた新型コロナウイルス感染症ですが、22年1月になって変異株であるオミクロン株が国内でも再び感染拡大しており、先行きが見通せない状況です。高2生が受験する23年度入試について、コロナ禍の影響がどうなるか、不安を感じている人も多いと思います。しかし、感染症対策についてはわからないことも多くありますが、高校のカリキュラムには変更がなく、基本的には21年度・22年度入試をもとに23年度入試が行われることは間違いありません。そこで、まだ22年度入試の途中ですが、その動向の特徴と23年度入試について、1月12日時点での情報をもとにまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。
 なお、新型コロナウイルス感染症対策として、今後23年度入試に関する詳細が発表された場合には、駿台のホームページの「大学入試情報」サイトでお知らせしますので、そちらも参照してください。)
 また、高1生が受験する24年度入試では、共通テストは3回実施後になることで、出題傾向が明確になってくると思います。したがって、今回の情報に加えて、文部科学省、大学入試センター、各大学から発表される最新情報や駿台のホームページに掲載される過去の共通テストの出題分析をよく確認してください。

共通テストの特徴とは?

 共通テストの出題教科・科目は過去の大学入試センター試験(以下「センター試験」)と変わりはありません。
 したがって、かつてのセンター試験の過去問の中にも、共通テスト対策で利用できる問題もたくさんあります。しかし、大きな変化もありました。英語のリーディングでは、発音・アクセント、語句整序、独立した文法問題がなくなり、すべて読解問題になりました。また、他の教科・科目でも実社会・実生活に即した問題、イラストや図を絡めた問題など新傾向問題が増えているのがわかります。
 これは、センター試験対策としては定番だった過去問演習に頼った単純なパターン学習だけでは通用しないことを意味しています。過去2年間の本試験及び追試験に対する研究は当然ですが、まだまだ過去問が少なく、共通テスト対策の参考書や問題集をうまく活用する必要があります。さらに、模試や通常授業、季節講習などで駿台のような大手予備校をうまく活用することもぜひ検討してください。

ポイントは「読解力」強化!

 共通テストの問題を見ると、全体的に問題文が長いといった分量の増加が大きな特徴だといえます。
 国公立大の個別(2次)試験、私立大の一般選抜でも問題文の分量が増える傾向があるだけに、長文をしっかりと読みこなす力、「読解力」の養成がますます重要です。
 最新の国際学習到達度調査(PISA)では、日本の高校生は数学的応用力、科学的応用力は高いレベルを維持した一方で、読解力の低下がはっきりとしていました。読解力低下の要因の一つには、本、新聞、雑誌を読まない人が増え続けていることがあげられています。
 スマートフォン(以下「スマホ」)で学習に有効なアプリを活用している人もいますが、SNSやゲーム、動画視聴など学習以外の用途で使用している人が非常に多いことが影響しています。「スマホとどう付き合うか」という課題が学力アップ、志望校現役合格に向けてのポイントになっていることは間違いないでしょう。

「記述力」「論述力」強化も忘れずに!

 国公立大の個別(2次)試験は従来から記述式、論述式の問題が出題されています。つまり、「記述力」「論述力」の重要性は以前からいわれ続けてきたことです。21年度入試では、難関私立大でも青山学院大、上智大、早稲田大・政治経済などで、共通テストの利用拡大と個別試験での「記述力」「論述力」を重視した出題を行うという改革が行われました。文部科学省は個別(2次)試験での記述式問題導入を推奨しているため、今後はますます国公立大、私立大の区別なく「記述力」「論述力」が重要になるといえます。
 SNSがごく当たり前になったことで、論理的な文章を書く機会がさらに少なくなっているのではないでしょうか。スマホとの付き合い方が重要なことがここでもわかることと思います。
 ここまで「読解力」「記述力」「論述力」の重要性に触れてきましたが、これらは大学入学後や社会に出てからもさらに重要となるものです。将来のためにもしっかりと意識して対策を進めていきましょう。

22年度入試での受験生の動き

《資料1》大学入学共通テスト出願者数2ヶ年比較

  確定志願者数 増減
2021年度 2020年度
出願者総数 530,367 535,245 −4,878
−0.9%
現役 449,369 449,795 −426
−0.1%
既卒等 80,998 85,450 −4,452
−5.2%

 資料1は、大学入試センターが21年12月7日に発表した22年度共通テストの確定志願者数をまとめたものです。確定志願者数は530,367人(現役:449,369人、既卒等:80,998人)で、前年度より4,878人(前年度比0.9%減)減少し、センター試験を通して4年連続減少となりました。
 現役、既卒等別では、現役は426人(前年度比0.1%減)の減少、既卒等は4,452人(前年度比5.2%減)の減少となりました。この結果、現役占有率(全志願者数に占める現役の割合)は84.7%となり、過去最高となった前年度の84.0%からさらに0.7ポイントアップしました。現役志願率(高等学校等卒業見込者に対する志願者の割合)も45.1%と前年度から0.8ポイントアップし、過去最高となりました。現役が微減に留まった理由として、コロナ禍収束の見通しがつかないことから、各学校でリスク回避を含めて積極的な受験指導が行われたことが考えられます。
 一方、既卒等は5.2%の減少でした。人口動態では10%近い減少が予想されていましたが、約5%減少に留まっており、大学不合格者の再チャレンジ組に加えて、再受験生(大学に在籍する学生の再受験)の増加が推測されます。これは、コロナ禍により思い描いたキャンパスライフが実現できなかったことが影響したといえます。

文理ともに志望者数回復!法・薬に人気

 薬に人気22年度入試をめざす受験生対象に実施された第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試(10/31実施)における系統別動向です。なお、系統名、専攻名および大学名、学部名等の後のカッコ内の数字は「前年度対比指数」を表します。

国公立大

《資料2》2021年度第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試 系統別志望動向<国公立大学>

 資料2に国公立大の系統別志望動向を示しました。全体では指数110の増加でした。20年度は前年度対比で指数88の減少でしたので、21年度はほぼ19年度並の志望者数に戻りました。この結果、実人数ではすべての系統が前年度対比で増加でした。以後の分析は全体指数110を基準として増減を見ていくことにします。
 文系の系統では、社会(119)、法(114)が全体以上の増加率でした。社会は地方大の増加が目立っており、地元志向の強まりが続いています。法は近年の志望者数減少の反動と経済活動の厳しさから公務員志向が高まっている影響があります。一方で、外国語(102)、国際関係(105)は全体の増加率を下回り、コロナ禍の影響を強く受けており人気の回復が見られません。
 文理いずれからも志望者がいる系統では、生活科学(121)、スポーツ・健康(117)、芸術(116)が全体を上回る増加率でした。生活科学は前年度減少の反動が見られました。スポーツ・健康は東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されたことで、再び関心が高まったことが影響しました。芸術は専攻別では映像(120)が全体よりも10ポイントも増加率が高く、特に映像クリエーター系分野への人気の高まりが見られました。一方で、総合科学(104)の増加率は全体を下回りました。人気は高いものの、21年度入試での増加の反動が見られました。
 メディカル系の系統では、薬(121)が全体よりも高い増加率で、コロナ禍の中での創薬への関心の高まりが影響しました。保健衛生(107)は全体を下回りました。総合科学と同様に系統への人気は高いのですが、21年度入試での増加の反動が見られました。医(111)、歯(108)はほぼ全体と同じ増加率でした。
 理系の系統では、理(112)、工(110)、農・水産(110)とほぼ全体と同じ増加率でした。国公立大理系進学へは科目負担が重く、「理高文低」とはいっても、理系志望者の増加には限界があることがわかります。

私立大

《資料3》2020年度第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試 系統別志望動向<私立大学>

 資料3に私立大の系統別志望動向を示しました。全体では指数118の大幅増加で、実人数では外国語を除く17系統が増加しました。増加率は国公立大全体よりも大きく、前年度よりも私立大専願層が積極的に共通テスト模試に参加しました。以後の分析は全体指数118を基準として増減を見ていくことにします。
 文系の系統では、法(125)が全体を上回りました。国公立大同様に近年の志望者数減少の反動と経済活動の厳しさから公務員志向が高まっている影響があります。一方で、国際関係(112)は全体を下回る増加率で、外国語(96)は前年度よりさらに減少しました。外国語は改組により系統が国際関係に変わった募集単位がある影響も加わりましたが、両系統ともに国公立大と同じくコロナ禍の影響が続いています。
 文理いずれからも志望者がいる系統は、いずれも全体よりも増加率が小さくなりました。スポーツ・健康(111)は、国公立大ほどは人気が戻っていません。他の系統は、前年度の減少率が小さかったために反動も小さく、全体よりも増加率は小さくなりました。
 メディカル系の系統では、薬(130)が全体を12ポイントも上回る増加率でした。国公立大と同様にコロナ禍による創薬への関心の高まりが影響していますが、人気は難関大に偏っており、二極化が起きています。歯(124)は21年度入試で大幅減少した反動が見られます。医(116)はほぼ全体と同じ増加率でした。
 理系の系統では、理(123)、農・水産(123)は全体を上回る増加率でした。工(119)はほぼ全体と同じ増加率でした。工の専攻別を見ると応用化学(131)、情報工学(126)が全体を上回っており、情報工学への関心の高さの継続とともに、近年人気が低下していた応用化学が底を打った感が見られます。「理高文低」の傾向は国公立大よりも科目負担が軽い私立大でより強く出ています。

「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」

 21年度入試から、入試種別名が変更となり一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の3分類となりました。
 総合型選抜と学校推薦型選抜は、以前は学力評価が不十分な例が少なくありませんでしたが、何らかの方法で入学時の学力チェックがされるようになり、「学力不問型入試」は姿を消していく方向です。そして、志望について自分でしっかりと考えて主体的に決定したかという点が、従来以上に問われることになります。

(1)総合型選抜(旧AO入試)

○ 学校長の推薦は、学校推薦型選抜と異なり必要ではなく、基本的にだれもが自由に出願可能。

○ 面接、調査書やエントリーシートなどの出願書類、小論文などで総合的に審査。

(2)学校推薦型選抜(旧推薦入試)

○ 学校長の推薦が必要。

○ 調査書などの出願書類、面接などで審査。英語4技能の評価がいわれるようになり、調査書の評定平均値などに加えて、英語外部資格・検定試験の成績も出願資格に加える大学もある。

○ 大学が過去の合格実績をもとに推薦を依頼する高校等を指定する指定校推薦、大学の定めた一定の基準を満たせばだれでも出願できる公募制推薦に分かれる。

 大学入学後に、講義に関心を持てない、ついていけなくて進級・卒業できないようでは困ります。難関大では従来から総合型選抜でも高学力が求められてきましたが、今後はどの大学でも学力チェックが行われます。部活動や委員会活動、ボランティア活動や資格取得だけ頑張っていれば良いというわけにはいかないことに注意が必要です。
 また、総合型選抜、学校推薦型選抜の2つを合わせて、最近は入試日程をもとに「年内入試」という言い方もします。私立大を中心に学生募集の大きな割合を占める入試種別となるまで拡大しています。23年度入試でも、「年内入試」の志願者数増加が予想されます。特に、総合型選抜への出願を検討している高1・2生は各大学の出願要件等をよく調べて、早めに学校の先生に相談するのが良いと思います。元々、主体性を評価する選抜方式ですから、待ちの姿勢ではなく積極的な働きかけが大事なのです。

23年度入試変更点

主要国公立大(医学部医学科除く)


《資料4》2023年度入試変更点<国公立大> ※クリックで拡大します

 23年度入試で予定されている入試変更点を主要国公立大(医学部医学科を除く)、主要私立大(医学部医学科を除く)、医学部医学科の3つに分けてみていくことにします。
 まず、資料4に示した国公立大ですが、名古屋市立大・データサイエンスの新設が予定されています。人気系統なので志望動向が注目されます。北海道教育大・前期で、「学びの履歴と志望理由書」の提出が求められます。主体性評価で受験生自身が作成した書類を用いるという25年度新課程入試での方針の先取りともいえます。
 横浜国立大・理工では前後期ともに2段階選抜が新規に導入されます。個別試験受験者を絞り込み、 記述力評価を厳格化したいという思惑もあると思われます。
 東京外国語大・前期は、共通テストの数学を2科目必須にします。また、横浜市立大・データサイエンス、理は前期で、個別試験に外国語を追加します。難関大での教科学力の評価を重視する動きに沿ったものといえます。
 岡山大では、全学部で後期が廃止されます。後期募集人員は基本的に特別選抜に、一部が前期に移行ということで、一般選抜の募集人員が減少することに注意が必要です。

主要私立大(医学部医学科除く)

《資料5》2023年度入試変更点<私立大> 
※クリックで拡大します

 次に、資料5に示した私立大ですが、キャンパス移転、学部・学科の新設や改組が目立ちます。
 中央大・法が都心に新設される茗荷谷キャンパスに移転します。伝統のある学部なだけに、志望動向の変化が注目されます。
 東京理科大は、新設および改組で、創生理工、先進工(物理工)、(機能デザイン工)が誕生します。さらに、学部新設では日本女子大・国際文化、京都女子大・データサイエンス、摂南大・現代社会など、注目される分野を対象とする新学部が生まれます。学部改組でも東洋大・福祉社会デザイン、健康スポーツ科学、立教大・コミュニティ福祉、スポーツウェルネスなど、新設と同様に需要の高い分野への改組が行われます。
 入試方式で注目されるのは、早稲田大・教育で共通テスト併用C方式の導入です。すでに早稲田大では政治経済、国際教養、スポーツ科学などで共通テストを重視した入試方式を導入しており、今回の教育の動向も注目されます。

医学部医学科

《資料6》2023年度入試変更点<医学部医学科>

大学 日程 項目 変更点 2023年度入試 2022年度入試
岐阜大 後期 選抜方法 後期廃止 前期 前期、後期
名古屋大 前期、後期 選抜方法
募集人員
前期地域枠新設
後期一般枠新設
後期地域枠廃止
募集人員変更
<前>(一般枠)85人、(地域枠)5人、
<後>(一般枠)5人
<前>(一般枠)90人、<後>(地域枠)5人
広島大 前期 選抜方法 第1段階選抜基準変更 約5倍 7倍

 最後に、現時点では資料6に示したように医学部医学科(以下「医学科」)の入試変更点は、岐阜大の後期廃止、広島大・前期の第1段階選抜基準の厳格化、名古屋大・前期の地域枠の設定とそれに伴う一般枠の募集人員の減少の3点です。
 今後は、22年度入試まで継続してきた医学科の臨時定員増がどう取り扱われるかです。コロナ禍で充実した医療体制が求められている中で、大きな定員削減はないかもしれませんが、後期廃止が続いており、分離分割方式による2大学受験のシステムの形骸化が進み、医学科合格には、共通テストで高得点を確保して、自信を持った前期出願が絶対条件となります。ぜひ、基礎力構築と共通テスト新傾向問題攻略をめざしてください。また、総合型選抜や学校推薦型選抜も活用して、受験機会を増やすことも重要ですが、選抜方法によっては負担が大きい大学もありますので、早期に志望校の選抜方法を確認して、学校の先生にも相談しながら対策を立ててください。

23年度入試に向けて

《資料7》

2023年度入試 年間スケジュール <2022年1月12日駿台推定>

※スケジュールは2022年1月12日現在で駿台が推定したものです。必ず文部科学省、大学入試センター、各大学公表の最新の学生募集要項等をご確認ください。

◆現役生は学校経由の出願となります。学校への出願書類提出期限は各学校で別途指示されますので、それに従ってください。

★手続最終日の取扱いは大学により異なりますので、注意してください。

◎新型コロナウイルス感染症対策等により、上記のスケジュールは大きく変更される場合がありますので、最新の情報に注意してください。

 過去2年間の入試は新型コロナウイルス感染症に翻弄されたといっても過言ではありません。22年度入試もオミクロン株の脅威にさらされています。この先、23年度入試を予測するのはとても難しい状況です。
 まず、資料7に23年度入試のスケジュールとして、センター試験の試験日が同日だった17年度入試をもとに駿台が推定したものを示しました。追試験もコロナ禍以前の本試験の1週間後に実施するものとしています。コロナ禍の今後の収束状況には不確定な部分が多いので、変更や特例措置などが行われる可能性もあります。常に最新情報を入手するために十分な注意を払ってください。
 23年度入試対策として、大きなポイントは21・22年度の2年間の「大学入学共通テスト」の実施結果を冷静に分析することです。どのような出題内容で、全国集計での900点満点や科目別の平均点、つまり難易度がどう変化したかを把握することから23年度入試対策が始まります。本試験と追試験の2年分4セットしか過去問はありませんが、共通テストの出題方針がきっと掴めるはずです。
 23年度入試の詳細は、各大学から7月中に公表される入学者選抜要項の発表を待たなければいけません。特に、コロナ禍の収束状況が不透明な中、例年では早くから確定している総合型選抜や学校推薦型選抜の出願要件や選抜方法が、 どのように取り扱われるのか、現時点ではわかりにくい部分もあります。文部科学省、大学入試センター、 そして各自の志望大学のWEBサイトを定期的にチェックすることは必要条件と考えて実践してください。
 しかし、具体的な入試の実施方法がどのように変化しても、合格を勝ち取るには日々の学校の授業が基本であることには変わりはありません。基礎力とは、教科書に書かれていることを正しく理解できている力です。基礎固めからスタートし、応用・実戦へと発展させて、「真の学力」を養成することで、志望校合格というゴールをめざしましょう。


Page
TOP